CD-ROMで出版される学会年報は、社会科学系の学会としてはおそらく初の試みである。その意義、編集方針等については刊行の辞を参照していただきたい。ひとことでいえば、「手作りの最先端の、そして、長い目で見て情報化のメリットが発揮できる年報」をめざして作業を重ねてきたわけだが、実際に作業を終えての率直な感想は、いかに我々編集委員が、出版という活動の川上の部分しか知らなかったか、ということである。
紙で出される学会誌などの場合は、多くの場合プロの編集者の支援を受ける。ところが、この年報の場合には、編集者レベルの仕事にとどまらず、組版に相当する作業までを編集委員会の手によって行うことになった。しかも、紙幅という物理的な制約を受けないため、内容は質だけでなく量も高水準。1998年6月の学会で会員の皆さんのお手元に届なければならない、という時間の制約は動かない。ほんとうにぎりぎりになってしまったが、とにかく間に合いそうだという点は、ほっとしている。とはいえ、当初構想していた項目のうち、十分に実現できずに終わった点も多い。
もっとも、この年報は蓄積型の年報として構想されている。今年実現できなかった点も、来年以降の年報の中でいずれは遡及的に実現することも不可能ではないのが良いところである。いずれにせよ、編集委員のみなさん、お手伝いしてくれたアルバイト諸氏、お疲れさまでした。また、素晴らしいデザインと、実用的なアドバイスをくださった東京堀田制作集団の堀田敦士さんには、この場を借りてお礼申し上げます。来年の編集委員の皆さん、どうぞよろしくお願いします。(K)